難病の子が「やってみたい」を叶える、こどもホスピスってどんな場所?

難病の子が「やってみたい」を叶える、こどもホスピスってどんな場所?

コロナ禍で友達と遊べない、行きたいところに行けないなど、子どもたちの経験が制限されています。

しかしコロナ以前から、日常から活動や行動に制限をされている子どもたちがたくさんいることを、ご存知でしょうか?

日本には難病の子どもが15万人いるとされています。さらにそのうち2万人は、命を脅かす病気(LTC:Life-threatening condition)を伴います。
〈TSURUMIこどもホスピス 私たちが取り組む社会課題とは〉

今回は、病気のため制限がある子どもたちの、やりたいことを叶える場所「TSURUMIこどもホスピス」を取材させていただきました。

大阪市鶴見区にあるTSURUMIこどもホスピス

ホスピスは末期がんなどで最期を待つ患者が、苦痛を最小限に抑えることを目的としています。しかし「病院のような場所」というイメージを覆すような、子どもと家族が安心して楽しく過ごす様子を知ることで、「子どもたちの今をサポートする大切さ」に気づきました。

  • この記事のまとめ
    • TSURUMIこどもホスピスは、専門家が病状に合わせて、難病の子どものやりたいことを叶える提案ができる場所。
    • やりたいことの実現により、その子らしさが立ち上がり、前へ進む気持ちが生まれる。
    • 環境を整えれば好きなおもちゃを選ぶ遊び、プールや雪合戦などの季節らしいイベント、会いたい人を誘うパーティーも楽しめる。

専門家と「その子中心」で考える楽しい時間のサポート

今回お話を伺ったのは、「公益社団法人 こどものホスピスプロジェクト」が運営する、「TSURUMIこどもホスピス」ゼネラルマネージャーの水谷綾さん。
〈TSURUMIこどもホスピス ホームページ〉

子どもたちのやりたいことを叶えるために、スタッフさんはどのような姿勢で、子どもたちをサポートしているのでしょうか?

水谷:とにかく「その子中心」で、子どもたちの不安や素直な声、やってみたい気持ちに寄り添っています。

病気が降りかかってきたことで、親子ともに「この先どうなるんだろう」と不安を抱えている。そして子どもには「今やりたいことがあるのに、病気で制限されてしまった。この先もできないのかな」という不安もあります。
お話を伺ったゼネラルマネージャーの水谷綾さん

こどもホスピスは医療や教育、保育の専門家を中心としたスタッフで運営されています。病状を把握した上で、子どものやりたいことをどうしたら実現できるか、提案できるのです。

水谷:やりたいことを実現することで、その子本来の姿が立ち上がってきます。普段もの静かな子が、妹にちょっかいを出してみるとか。

その様子を見た親御さんが「可能性を信じていいんだ」と、違う風景にも目を向けられる場面があります。

楽しい時間から「今度はいつ行けるの?」「こんなことがしたいね」と話が広がり、前へ進む気持ちが生まれる。そんな時間を、私たちは提供しています。

「今しかできない」を子どもたちが全力で楽しめる

ホスピス館内には絵本やおもちゃ、楽器や大きなお風呂など、さまざまなテーマのお部屋があります。

中庭では夏に水遊び、冬は雪合戦といった、季節感あふれるイベントも開催されるそうです。

そんなスペースで自分らしく楽しむ、子どもたちのエピソードを伺いました。

プールにマイク、絵本。自分で選んだおもちゃで遊ぶ

たくさんのものがある環境で、子どもたちのやりたいことは、どのように実現されていくのでしょうか?

水谷:事前にプログラムを組んでいるというより、ホスピスに来てから子どもたちが「今日はなにをしよう?」と決めています。

たとえば先日来た子だと、プールで水遊びをして、疲れたらマイクを取り出してカラオケごっこ。また飽きたら、絵本を読みはじめて……という感じでした。

笑いながら話す水谷さんから、楽しそうな様子が伺えました。制限のある生活をしていた子どもたちにとって、自分で選べる経験は、うれしいものではないでしょうか。

自分で選んだおもちゃを使って好きなように遊べる
水谷:たくさんのものがあるので、子どもたちは「次はあれがやりたい」と、いろいろなものに興味をもちます。

そんな様子を見た親御さんは「この子のやりたいっていう気持ち、久しぶりに見た!」と、うれしい驚きを感じていました。

今年の夏は、中庭のプールで「泡まつり」!

季節感のある遊びは大人気。夏は中庭のプールで、毎日のように水遊びをしているとのこと。

さらに取材の翌日は、いつもと違う水遊びが開催されたそうです。それは、牛乳石鹸共進社株式会社さんとコラボした、石鹸の泡をたてたプールでの「泡まつり」。

牛乳石鹸さんは、本社が大阪市城東区、工場が鶴見区にあります。地域との関わりとして、開業当初からさまざまなサポートをいただいているそうです。

牛乳石鹸さんとコラボして開催された「泡まつり」の一コマ
水谷:厳しい衛生管理や、主治医からの許可が必要など、プールも制限は多いです。今年は感染対策もしっかり行います。

それでもセッティングを工夫して、人数も調節すれば、楽しく遊べます。その子の夏は今しかないので、なんとしても実現させたいんです。

親戚やきょうだい、学校や病院の友達を誘ってパーティーができる

こどもホスピスは、イベントやプログラムによって、子ども同士で遊ぶ様子が見られます。子どもたちは、どんな交流をしているのでしょうか?

水谷:このホスピスの特徴は、親戚や友達を呼べること。子どもの願いを起点にしているので「会いたいなら、ここに誘ってパーティしよう」という提案もできるんです。

本来、子どもはきょうだいやいとこ、近所の子どもたちなど「地域社会」で育まれるものだと思うんです。けれど病気によって、つながりから分断されてしまう。病気の子どもと家族にも、地域の中で安心して過ごせる場所が必要です。

また、ホスピスに来る子どもたちには、入院中に知り合った友達もいます。一緒に遊ぶなかで「治療はしんどかったけど、遊べるようになってよかったよね」というように、不安を口にすることがあります。分かち合える存在がいることで、話してもいい場所になるんです。

そんな言葉を出せる場所であり続けたいし、私自身も子どもたちのサインを感じ取れる人でありたいと思っています。

地域で交流し、気軽に話せる場所があれば、病気やホスピスについての理解も広がりそうです。

以前開催された雪あそびイベントの様子

笑顔になれる時間をつくり、その子らしさを引き出すホスピス

「環境さえ整えれば、より多くの子どもが自分らしい時間を楽しめる」と、水谷さんは何度もおっしゃっていました。

こどもホスピスは、笑顔になれる特別な場所。そして同時に「本来子どもにとって当たり前の日常が送れる場所」「すべての子どもたちに、平等にあってほしい時間」という印象を受けました。

この記事がホスピスのイメージを変え、今を生きる子どもたちが、地域の中で安心して過ごせる場所の大切さを考えるきっかけになれば幸いです。

活動に共感いただけたら、ぜひ記事のシェアでより多くの人に教えていただけるとうれしいです。

TSURUMIこどもホスピス スタッフのみなさん

寄付による応援をお願いします
現在TSURUMIこどもホスピスは、小学校高学年から中高生に向けたケアができる環境、プログラムを準備しています。子どもたちの「今しかできない」経験づくりは、寄付によって支えられています。
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