外国籍児童5万人に必要な学習支援 「学習塾の明光」が考える地域との連携とは

外国籍児童5万人に必要な学習支援 「学習塾の明光」が考える地域との連携とは

日本で暮らす外国人は増えており、2015年12月に223万2千人だった在留外国人統計は、2020年12月では288万7千人でした。

在留外国人にとって、大きな問題のひとつが「言葉の壁」。困っている人の中には、子どもたちも含まれます。

平成30年度の調査によると、日本語指導が必要な外国籍児童生徒は51,126人。
〈参考:文部科学省/「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(平成 30 年度)」の結果の訂正について〉

しかし公立学校では「指導を行う担当教員がいない(4,167校)」、「教育課程の編成が困難(3,160校)」などの理由から、特別の教育課程による指導が難しいようです。
〈参考:文部科学省/「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(平成 30 年度)」の結果について〉

そんな外国籍児童を支援するため、「明光ネットワークジャパン」は「BRIDGE」プロジェクトを立ち上げました。

8月末の取材日は、夏のプログラムを終了したばかり。課題や当日の様子を伺う中で、支援事業を行うには、企業と地域の連携が大切だと知りました。

  • この記事のまとめ
    • 日本語指導が必要な外国籍児童は51,126人。学習支援とともに、居場所づくりが必要。
    • 企業の強みと団体がもつネットワークが連携することで、地域に密着した、信頼性と持続力のある事業になる。
    • 支援事業は、ひとつの企業だけではできない。明光ネットワークジャパンも、学校のネット環境や教材などの課題を、学校や団体と連携して実現した。

企業と地域、お互いの強みを活かす

今回お話を伺ったのは、「明光ネットワークジャパン」の古賀さんです。

「明光義塾」のイメージが大きい明光ネットワークジャパンですが、外国人の就労支援や日本語教育サービス「MEIKO GLOBAL」も運営しています。

その中で見えてきたのが、就労している家族や子どもたちに向けたサポートの不足。「もともと教育に力を入れてきた企業にできる支援として立ち上がったのが「BRIDGE」とのこと。
〈外国人児童教育支援プロジェクト「BRIDGE」 ホームページ〉

グローバル人材センター浜松にある地域のネットワーク

第一弾の対象は、浜松市の小中学生。静岡県内で在留外国人が最も多い市で、2020年12月の統計によると、26,352人が在住しています。

今回は、浜松市で日本語教育などの在住外国人支援事業を行なう「一般社団法人 グローバル人材サポート浜松」と連携したプロジェクトです。
〈一般社団法人 グローバル人材サポート浜松 ホームページ〉

他団体との連携でしたが、プロジェクトはどのように進めていったのですか?

古賀:お互い明確に役割分担をしていて、先方には地域のネットワーク関係をお願いしていました。

地域との関わりが深い団体さんは、私たちにはわからない地域の状況を把握していて、教育委員会や学校とも連携がとれます。

具体的には、教育委員会と話をしていただき、学校を経由して学習できる場所の用意、対象の児童への呼びかけをしていただきました。学習指導スタッフとしてご協力いただいたのも、団体に所属している学生ボランティアです。

安心できる学校や地域のネットワークによって、情報の取得が難しい人たちにも、支援が届きやすくなるのですね。

明光ネットワークジャパンにある学習指導ノウハウ

一方で日本語講師の育成経験のような教育面は、明光ネットワークジャパンの強みです。実際に、どのようなサポートをしていったのでしょうか?

古賀:使用する教材の取りまとめや、学生ボランティアへの研修を行いました。

ボランティアは、外国籍の児童への学習サポート経験のない人がほとんど。まずどう接したらいいかわからない中なので、子どもたちの精神状態、接する際の心構えからお伝えしました。

意識していただいたのは、子どもたちにたくさんのことを教えるより小さなゴールを設定して「ひとつでもわかった、気づけた」「少しでも前に進んだ」体験にすること。

外国籍児童にとって、一番の課題は孤立。親でも先生でもない大人と話しながら発見する、褒めてもらえることで、自信を取り戻せる居場所にしたかったんです。

学生ボランティアの方々からも「事前研修があったおかげで、安心して学習指導に取り組めた」という声があったそうです。

プロジェクト第一弾で見えた課題や想い

「BRIDGE」プロジェクトの第一弾は、夏休みの宿題でわからないところを中心とした、オンライン学習指導。

「すでにノウハウをお持ちなのだろう」と思っていましたが、たくさんの課題解決や各所への連絡など、地道な準備をされていました。

そこで、今回実施してみて見えた課題や、今後に向けた想いをお伺いしました。

公立学校のネット環境、オンライン指導に対応できる?

オンライン指導はコロナ禍の現状に適しているほか、多くのボランティアが参加できるメリットもあります。

しかし公立学校のネット環境には「パソコン1台を4.9人で利用している」「普通教室の無線LAN整備率48.9%」などの現状があります。
<参考:文部科学省/令和元年度学校における教育の情報化の 実態等に関する調査結果(概要) (令和2年3月現在)>

そんな環境でのオンライン学習、大変ではないですか?

古賀:使う予定だったZoomを、学校が取り入れていない。外部の人も入れるGoogle Meetのアカウントを作成していただくなど、調整が必要でした。

けれど学校側からは「やってほしい」と要望があり、実際の様子を見て「こういう場が必要なんだ」とわかっていただけました。

また外部からの関与をご理解いただくのも、難しかったと感じます。それでも学校でこうした指導ができるとわかり、教育委員会との関係も築けたため、今回はよいスタートになったと感じます。

複数社でつくられた教材は、内容にバラつきがあった

次にお聞きしたのが、教材や教科書に関する問題です。教材はどのようなものを使っているのですか?

古賀:今回は教科書に沿ったプリントをつくり、外国籍児童向けの教材を併用しました。

けれど教材は、さまざまな団体によってつくられているため、内容にバラつきが見られました。それらをすべて調べてピックアップし、団体さんに使用の許可取りをしました。内容の統一するお手伝いもしております。

教材をつくっている団体さんは「ぜひ使ってください」と前向きに捉えていただけました。

また教科書の出版社には「予算がない」といった課題もあり、外国籍児童向けの教科書作成は進んでいない、という現状もわかりました。

「教科書の内容がわからず、学習が進まない」という問題は、令和元年8月から文部科学省で検討会議が行われています。
〈参考:文部科学省/外国人児童生徒等における教科用図書の使用上の困難の軽減に関する検討会議報告書〉

教育の背景にあるのは、すぐには変えられない、大きなものばかり。「BRIDGE」の事業で支援の必要性が広がり、少しずつ現状が変わっていくことを願います。

もっと長期間、さまざまな地域で開催したい

プロジェクト第一弾は大好評。子どもたちからは「またやりたい」「継続してくれないの?」という意見もあり、学生ボランティアの方々からも笑顔が見られたそうで、相互的な効果が伺えます。

最後に、今後の目標をお聞きしました。

古賀:今回は3日間でしたが、学習を進めるため、より長期間のプログラムを開催できたらいいですね。

またさまざまな自治体に広げたいと考えています。自治体も含めて、地域の団体や企業の方々に少しでも意向があれば、ぜひ一緒にやらせていただきたいです。

事業を広げるには、地域の理解と協力が不可欠

「地域に密着した支援事業は、ひとつの企業だけではできない」と、古賀さんは強くおっしゃっていました。

企業のメリットと、地域のネットワーク。連携によって、それぞれの強みを活かした信頼性と、持続力のある事業になっていくのです。

外国籍児童への学習支援は、全国的に必要なもの。学習を通じた子どもたちの居場所が、より多くの地域に広がることを願います。

パートナー・サポートの募集
「BRIDGE」プロジェクトでは、パートナーとなる企業や団体を募集しています。
「自分たちの強みで、外国籍児童への支援ができないか」と考えていましたら、サポートをお願いします。
〈パートナー募集はこちらから〉

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